都道府県の順序は約100年前から同じ、四国は1000年同じ(かもしれない)

大正時代の人口統計を眺めていたら、道府県の配列がすでに現在よく使われているものと同じであることに気付いた。

現在よく使われている都道府県の配列とは、JIS X 0401 都道府県コードによるもので、01 北海道から 47 沖縄県まで北から順に並んでいる。しばしばJIS X 0402 市区町村コードとの組み合わせで用いられる。 全国地方公共団体コード - Wikipedia によれば以下のような経緯で制定されたらしい。

1968年、自治省(現総務省)が事務処理の簡素化のために導入した。1970年4月1日に行政管理庁(後の総務庁、現 総務省)が統計処理用のコードとしてこのコードを採用し、以降国勢調査などの各種統計に利用している。また、同日づけでJIS規格にも指定された。

順序自体もその頃に固まったものかと思い込んでいたが、戦前まで遡れることがわかったので、調べた範囲のことをメモしておく。

統計資料

国立国会図書館デジタルコレクションから、大正〜昭和初期の統計資料のうち府県別の表について、どのような順序になっているかを、地方別集計があるものはその区分を調べ、以下にまとめた。

発行年 調査年 資料名 府県順序 地方区分
大正元年 明治41年 日本帝国第三十一統計年鑑 5区分 5区分
大正2年 明治41年 日本帝国第三十二統計年鑑 5区分 5区分
大正3年 明治41年 日本帝国第三十三統計年鑑 9区分A 9区分A
大正9年 大正9年 国勢調査速報 世帯及人口 旧配列 9区分A
大正10年 大正7年公簿
大正9年国勢
日本帝国第四十統計年鑑 9区分A 9区分A
大正11年 大正7年公簿
大正9年国勢
第四十一回日本帝国統計年鑑 9区分A 9区分A
大正12年 大正9年 第四十二回日本帝国統計年鑑 9区分A 9区分A
大正13年 大正11年 日本帝国人口動態統計 旧配列
大正13年 大正9年 第四十三回日本帝国統計年鑑 9区分B 9区分B
大正14年 大正14年 国勢調査速報 旧配列 9区分B
大正14年 大正12年 日本帝国人口動態統計 9区分B
大正15年? 大正14年 国勢調査報告 第2巻 旧配列 9区分B
昭和3年 大正9年 国勢調査報告 全国の部 第1巻 現配列 9区分B
昭和5年 昭和5年 国勢調査速報 世帯及人口 現配列 9区分B
昭和10年 昭和5年 国勢調査報告 現配列 9区分B

府県が区分別になっていても(波括弧で括られていても)地方別の集計がない場合もあるようだ。

旧配列 区分→ 5区分 区分→ 9区分A 区分→ 9区分B
=現配列
1 東京府 本州中区 東京府 北海道 北海道
2 京都府 神奈川県 東北区 青森県 東北区 青森県
3 大阪府 埼玉県 岩手県 岩手県
4 神奈川県 千葉県 秋田県 宮城県
5 兵庫県 茨城県 山形県 秋田県
6 長崎県 栃木県 宮城県 山形県
7 新潟県 群馬県 福島県 福島県
8 埼玉県 長野県 関東区 茨城県 関東区 茨城県
9 群馬県 山梨県 栃木県 栃木県
10 千葉県 静岡県 群馬県 群馬県
11 茨城県 愛知県 埼玉県 埼玉県
12 栃木県 三重県 千葉県 千葉県
13 奈良県 岐阜県 東京府 東京府
14 三重県 滋賀県 神奈川県 神奈川県
15 愛知県 福井県 北陸区 新潟県 北陸区 新潟県
16 静岡県 石川県 富山県 富山県
17 山梨県 富山県 石川県 石川県
18 滋賀県 本州北区 新潟県 福井県 福井県
19 岐阜県 福島県 東山区 長野県 東山区 山梨県
20 長野県 宮城県 岐阜県 長野県
21 宮城県 山形県 滋賀県 岐阜県
22 福島県 秋田県 東海区 山梨県 東海区 静岡県
23 岩手県 岩手県 静岡県 愛知県
24 青森県 青森県 愛知県 三重県
25 山形県 本州西区 京都府 三重県 近畿区 滋賀県
26 秋田県 大阪府 近畿区 京都府 京都府
27 福井県 奈良県 兵庫県 大阪府
28 石川県 和歌山県 大阪府 兵庫県
29 富山県 兵庫県 奈良県 奈良県
30 鳥取県 岡山県 和歌山県 和歌山県
31 島根県 広島県 中国区 鳥取県 中国区 鳥取県
32 岡山県 山口県 島根県 島根県
33 広島県 島根県 岡山県 岡山県
34 山口県 鳥取県 広島県 広島県
35 和歌山県 四国区 徳島県 山口県 山口県
36 徳島県 香川県 四国区 徳島県 四国区 徳島県
37 香川県 愛媛県 香川県 香川県
38 愛媛県 高知県 愛媛県 愛媛県
39 高知県 九州区 長崎県 高知県 高知県
40 福岡県 佐賀県 九州区 大分県 九州区 福岡県
41 大分県 福岡県 福岡県 佐賀県
42 佐賀県 熊本県 佐賀県 長崎県
43 熊本県 大分県 長崎県 熊本県
44 宮崎県 宮崎県 熊本県 大分県
45 鹿児島県 鹿児島県 宮崎県 宮崎県
46 沖縄県 沖縄県 鹿児島県 鹿児島県
47 北海道 北海道 沖縄県 沖縄県

解説

  • 旧配列は、明治4年に発せられた太政官布告*1に基づく順序。東京府京都府大阪府の三府を筆頭に、四港、関東という重要地域が続き、その他の県は五畿七道順に並ぶ。
    47道府県が確立する以前の布告なので、新設された道府県などの順序に若干のブレがあるものの公的な場面では広く用いられていた。

  • 5区分沖縄県・北海道以外の府県を「本州中区」「本州北区」「本州西区」「四国区」「九州区」の5地方に区分するもの。区分内の順序は三府を筆頭に置きつつも一筆書きを指向しているように見え、他の配列にはあまり似ていない。
    国デジでは大正元年以降しか閲覧できないが、明治期における日本地誌の学習方式と地域区分によれば、この区分は明治23年の第九統計年鑑から用いられているらしい。

  • 9区分Aは「東北区」「関東区」「北陸区」「東山区」「東海区」「近畿区」「中国区」「四国区」「九州区」の9区分。区分内の順序は北東から南西への順に改められている。

  • 9区分Bは9区分Aから山梨県が東海区から東山区へ、滋賀県東山区から近畿区へ変更になり、区分内の順序も一部入れ替わりがある。

  • 現配列は順序に関しては9区分Bと変わりはないが、区分を示す波括弧が付いていないものを区別した。これは現在の都道府県コードと同じ順序。

職員録

一応統計以外の公的資料にも当たるべきだが、一つだけ触れておく。

職員録は、戦前においては北海道庁が先頭だったり、東京都制以降は二番手だったりするが、基本的には一貫して旧配列のようだ。

戦後のものはインターネット公開されていないが、目次は閲覧することができ、遅くとも昭和27年には現配列になっていることが確認できる。

まとめ

調べた範囲のことから以下のことが推測できそう。

  • 日本帝国第三十三統計年鑑の9区分をベースに、大正9年国勢調査に前後して調整が加えられて現在の順序が確立し、区分ありきの順序だったものがそのまま定着した。
  • 統計上の配列がそれ以外の用途にも広く用いられるようになったのは戦後、「北陸区」「東山区」「東海区」という区分が廃れても「中部地方」とみなして問題ないため手を加えられず使われ続けた。

また些細な点だが四国4県の「徳島県香川県愛媛県高知県」という順序はずっと変わっていないのが面白い。

旧配列は令制の「阿波国讃岐国伊予国土佐国」の順序を踏襲し、それを引き継いでいるので、1000年以上順序を維持していると言える。

CSS Grid Layout で日本地図

数年ぶりにHTMLまわりを調べていたらCSS Grid Layoutのことを知り、面白そうだったので試してみたの巻です。

CSS Grid Layout

以下の記事を大いに参考にさせていただきました。

これを使えば太古のtableレイアウト的な考え方で今風のレイアウトができますね!

tableレイアウトといえば、昔tableタグでこんなものを作りました。

Grid Layoutならtableタグを使わなくても、要素の並びを地図状に配置できそうです。

というわけで

See the Pen Grid Japan Map by 4b3 (@4b3) on CodePen.

作りました。 よく使いそうなリストとチェックボックスの2パターンを用意しました。

リストではホバー時とアクティブ時に、チェックボックスではそれらに加えて選択状態でスタイルが変わります。

HTML

リスト
<ul class="gridmap">
  <li class="pref hokkaido"><a href="#">北海道</a></li>
  <li class="pref tohoku"><a href="#">青森</a></li>
  〜 中略 〜
  <li class="pref kyushu"><a href="#">沖縄</a></li>
</ul>
チェックボックス
<div class="gridmap">
  <input type="checkbox" name="pref" id="cb01">
  <label for="cb01" class="pref hokkaido">北海道</label>
  <input type="checkbox" name="pref" id="cb02">
  <label for="cb02" class="pref tohoku">青森</label>
  〜 中略 〜
  <input type="checkbox" name="pref" id="cb47">
  <label for="cb47" class="pref kyushu">沖縄</label>
</div>

input:checked + labelで指定できるようにするために、inputlabelを横並びにしています。1 label.prefがグリッドアイテムになります。inputは非表示にします。

また、.prefは色分けのために地方別でクラス分けしています。 グリッドコンテナ直下でないとグリッドアイテムにならないので、例えば.gridmap > .kyushu > .prefのようにまとめることはできなさそうです。

CSS

2パターンともスタイルは共通です。グリッドに関係する部分は以下。

/* グリッドコンテナ */
.gridmap {
  display: grid;
  grid-template:
    "... p01 p01 p01 p01 p01 p01 p01 ... ... ... ... p02 p02 p02 p02" 1fr
    "... p01 p01 p01 p01 p01 p01 p01 ... ... ... ... p05 p05 p03 p03" 1fr
    "... p01 p01 p01 p01 p01 p01 p01 ... ... ... ... p06 p06 p04 p04" 1fr
    "... ... ... ... ... ... ... ... ... p17 p16 p15 p15 p07 p07 p07" 1fr
    "p41 p40 p40 p35 p32 p32 p31 p28 p26 p18 p21 p20 p10 p09 p09 p08" 1fr
    "p42 p43 p44 p35 p34 p34 p33 p28 p26 p25 p21 p20 p11 p11 p11 p08" 1fr
    "... p43 p45 p38 p38 p37 p37 p27 p29 p24 p23 p20 p19 p13 p13 p12" 1fr
    "p47 p46 p45 p39 p39 p36 p36 p30 p30 p24 p23 p22 p22 p14 p14 p12" 1fr
    /2fr 2fr 2fr 2fr 1fr 1fr 2fr 2fr 2fr 2fr 2fr 2fr 2fr 1fr 1fr 2fr;
  gap: 2px;
  grid-gap: 2px;
}
/* グリッドアイテム */
.pref:nth-of-type(1) { grid-area: p01; }
.pref:nth-of-type(2) { grid-area: p02; }
  〜 中略 〜
.pref:nth-of-type(47) { grid-area: p47; }

以下、各プロパティの詳細は解説記事等にお任せして、気づいたことをメモします。

grid-templateはAAっぽく配置を指定することができるというちょっとギョッとする構文ですが、今回みたいなのを作るにはめっちゃ重宝しますね……。 同じ識別子が成す領域は矩形になっている必要があるので、リアル寄りの北海道は描けません。当然識別子が違う箇所でカブっていても駄目。

単位frはグリッドレイアウト専用らしいので使ってみました。 列の幅は基本2frにしていまが、2箇所1fr 1frに分割してるところがあります。その列だけgapの分横に広くなってしまっていますが、目を瞑ります。

gapgrid-gapは前者が新しいらしいですが、Safari 11.1が未対応だったので両方指定しています。

grid-areaは数値(グリッドライン番号)を取りうるので、識別子の頭文字に数字は使えません。 grid-templateのいじりやすさを考えると、HK, AM, IT,... のような都道府県名を想起しやすい識別子もいいかもしれませんね……! →都道府県名の英字2字略号 - 4b3のブログ

あとはスタイルを揃え、お好みで味付けして完成です。

参考記事

参考になった、あるいは一部ネタが被っていた記事です。


  1. いちいちidforが必要で面倒ですね……CSS4ならlabelの中にinputを入れてlabel:has(> input:checked)的な指定ができるのかなと思うんですが……

Natural Science(s) Buildingのはなし

全国の大学がグローバル化の波に乗ろうといろいろやっている流れなのか知らないが、うちの大学の各所にある案内標示板がある頃に一斉に4ヶ国語併記になった。(以前は日英2ヶ国語併記)

これがどうもデザインがアレだったり訳が怪しかったりするんだけど、こないだ面白いものを見つけた。

「自然系学系棟」と「理科系棟」の英語表記がカブっている。
正確には「Natural Sciences (A) Building」と「Natural Science Building」と言った具合に、複数形のsの有無の差がある。
実際には前者はA棟からE棟、後者はA棟からD棟まであるので、別にABCの有無で区別をしているというわけでもなさそう。

まず、大学内にある他の「○○学系棟」には、「Institutes of ○○」という訳が与えられており、
大学Webページに掲載されている英語のキャンパスマップ*1にも「自然系学系棟」の位置には「Institutes of Natural Sciences」とある。
しかし、Google ストリートビューで付け替え前の標示を見ることができるが、こちらは「Inst. of Physical Sci.」と書いてあるようだ。生物系の研究は「生物・農林学系棟」で行われているようなので、自然系学系棟で扱っているところの自然科学に与える訳としては「Physical Science」でも間違ってないのかなと思う。

一方「理科系棟」のほうは、キャンパスマップにもストリートビューにも「Natural Science Building」と書いてある。
理科系棟は以前は「理科系修士棟」と呼ばれ、広場を挟んで反対側にある「文科系修士棟」と対になっていた(英語名称は「Master’s Programs in ○○」)が、理科系だけが改称されている。

ところで、研究組織としての「学系 (Institute)」は2011年ごろに廃止され、教員組織「系 (Faculty)」に取って代わられているっぽい。なので、旧学群が再編されて「第3学群A棟」が「3A棟」になったのと同じように、学系棟も実情に則した名称に改称してもいいのではないか。しなくてもいいけど。

都道府県名の英字2字略号

アメリカの州には郵便公社による英字2字の略号があっていろいろ使われてるけど日本の都道府県にはそういうのはないので必要な場面ではいろいろなのが使われてるみたい

以下適当に調べてまとめてみました(例外などが多くいろいろなところを無視して載せていたりするので詳しくはリンク先を見てね)
ほかにもあるっぽけどとりあえず公的なのとか目ぼしいものだけ

県名 厚労 車両 繊維 KCJ 漁船
北海道 HK - HK - HK
青森県 AO AM AM AM AM
岩手県 IT IT IT IT IT
宮城県 MG MG MG MG MG
秋田県 AK AT AK AT AT
山形県 YG YA YG YM YM
福島県 FS FS HS FS FS
茨城県 IB IG IG IB IG
栃木県 TC TG TG TG TG
群馬県 GU GM GM GM GM
埼玉県 ST ST ST ST ST
千葉県 CB CB TB CB CB
東京都 TY TK TK TK TK
神奈川県 KN KN KN KN KN
新潟県 NI NG NG NI NG
富山県 TM TY TY TY TY
石川県 IS IK IK IK IK
福井県 FI FI HI FI FK
山梨県 YN YN YN YN YN
長野県 NA NN NN NN NN
岐阜県 GI GF GH GF GF
静岡県 SZ SZ SO SO SO
愛知県 AI AC AT AC AC
三重県 ME ME ME ME ME
滋賀県 SI SI SG SI SG
京都府 KY KT KT KT KT
大阪府 OS OS OS OS OS
兵庫県 HG HG HG HG HG
奈良県 NR NR NR NR NR
和歌山県 WA WK WK WK WK
鳥取県 TT TT TT TT TT
島根県 SM SN SN SN SN
岡山県 OY OY OY OY OY
広島県 HS HS HR HS HS
山口県 YA YU YK YG YG
徳島県 TK TS TS TS TO
香川県 KA KA KG KA KA
愛媛県 EH EH EH EH EH
高知県 KO KO KC KC KO
福岡県 FO FO HO FO FO
佐賀県 SG SA SA SG SA
長崎県 NS NS NS NS NS
熊本県 KU KU KM KM KM
大分県 OI OT OI OT OT
宮崎県 MZ MZ MZ MZ MZ
鹿児島県 KG KO KS KG KG
沖縄県 OK ON ON ON ON

筑波研究学園都市風水攷

今年の妄想は今年のうちに……

2013年は筑波研究学園都市50周年という節目の年だった。
筑波研究学園都市には、東西南北の入り口に「都市ゲート」と呼ばれるモニュメントがあって、それぞれ四神に見立てた四色(すなわち、東に青、南に朱、西に白、北に玄)が配色されており、よくこれを取り上げて「筑波は風水に守られた街」ということがある。*1 *2 一方「筑波の風水はよくない」という話もあるので、都市ゲートがそれをなんとかして補っているのかもしれない。
そもそも筑波は国家の一大プロジェクトであったが地元の反発を受けて計画を大きく縮小せざるを得なかったという経緯があるので、もしそういう呪術的なものに基づく街づくりを構想していたけど結果的にそれが不可能だったというのなら大いに有りうる。
これはひょっとしてそういう系の名残的なアレなのでは、と思える点をいくつかでっち上げたがいくつかあったのでメモしておく。もちろん僕は風水のことなど何も知らないんでしっちゃかめっちゃかなことを書いているに違いないことを保証する。

東京からの相対的位置

筑波は東京の過密対策を目的として、一部官庁の移転のために富士・赤城・那須・筑波の候補から選定された。しかし、閣議了解の際には、第一の目的に「科学技術の振興と高等教育の充実」が取って代わり、研究学園都市と名を変えた。
筑波は東京の北東であり鬼門であるが、北東は同時に「教育・知識・学業」の方位であるともいう。湯島聖堂江戸城の北東にある。
背景として「移転候補に研究・教育施設の名が多く挙がったので相応しい方角の筑波に決めた」または「地理的に筑波が優れていたのでその方位にふさわしい機関を移転候補に挙げた」というシナリオは十分に考えられる。

四神相応

有名な山川道沢説に従えば、北に筑波山、東に桜川、西に国道294号線、南に牛久沼が当てはまる。東と西は厳しいかもしれないが、盆地になっていないという点を除けば背山臨水の原則には即している。
4つの移転先候補、富士・赤城・那須・筑波のうち、富士山麓を同時期に定められた首都圏整備法の定める範囲内である山梨県側と考えると、どれもいい線をいっているようだが、やはり適地は筑波なのではないかと思える。
まあ、いろいろ調べるとおかしいのはすぐわかるが、本当に良い土地なら既に街ができているだろうし、条件が2つ揃っているだけでも験担ぎくらいには丁度良い。

筑波山からの相対的位置

中心市街地は女体山山頂の真南に位置する。既存集落を避け町村の境界地帯を開発しているので、用地は北北西から南南東に細長く、碁盤の目を経緯線に平行に設けることはそもそも困難だったと思われるが、東新井の一帯だけは旧集落を飲み込んでしまっているのは、どうしても中心市街地をここに置きたかったからではないだろうか。
ついでに男体山の真南は筑波大学、宝篋山の真南は産総研の中心部。
そして北大通り・中央通り・土浦学園線・南大通りは、夏至の日の出・冬至の日没の方角と平行。ただの偶然っぽい。

土地の由緒

なにより諾冊二尊(というかまさに陰陽だしそれだけで風水っぽい)が御座す筑波山があり筑波山神社があり、神皇正統記が著された小田城址もあり、いろいろあるし国運を賭すにはなんだかんだでふさわしい土地なのかもしれんと思うが、その話はなんか関係ない気がするのでいいや。
しかし、牛久沼の手前までの広い範囲の都市に筑波という名を冠したのは、言霊がどうとまでは言わないまでも、それなりの思いがあったのだろうなーという気がする。まあむしろそれ以外に何て名付けるよ、という部分もあるが……

発端

僕の適当な発言と、それに対するtmorio先生のリプライ。

あと前回の『地名攷』も含め、全体的にいそべさとし氏の古典的名著『筑波研究学園都市のなぞ』リスペクト。

筑波研究学園都市地名攷

筑波研究学園都市 研究学園地区の字の由来などのまとめとか考察とか。以前からちまちま調べていて書きためていたものですが、出典とかをメモしてなかったのでただの怪文書です。いつか裏をとったりしたい。
今回の対象は研究学園地区(国の計画によって建設されたエリア)で、周辺開発地区(それ以外)は対象としません。すなわち「花室」「大曽根」「手代木」などの旧集落や「桜」「東光台」「研究学園」(←紛らわしすぎだろ)など研究学園都市建設以降に開発されたエリアは含まれません。こちらもいつかまとめたい。

(2016/11/30) 久しぶりに読んだら文章が変なところがあったのでちょっと修正

概要

研究学園地区の地名には「旧字・町名・集落名・通称地名を採用したもの」「付近の伝承や寺社名などの民俗から採ったもの」「方角地名」「合成地名」に大別される。また、当時あった「大字○○」という冠称を削除する、「○○町」などの冠称や「○○△△」といった複合地名の形を取らないという方針があったことが伺える。また、旧町村を跨る地名の境界は旧町村境をほぼ踏襲し直線的に整理している。

筑波地区

上沢

大字水守字上沢から。字上沢は隣接する現・大穂にも跨っていたとみられる。また、大穂側に三等三角点「上沢」がある。なお、大穂との境界は現在は緯線にほぼ並行だが、旧町境は北西から南東に走っていた。

大穂地区

大穂

旧町名から。市制以前は上原で、谷田部町に同名の大字があったため改称した。こちらは大字前野字上原からで、これも北隣の現・上沢に跨っていた模様。

立原

未詳。旧字に大字蓮沼字原・大字篠崎字原山が、付近にも「原」地名が多くあり、また大字大曾根字タテタシ(漢字表記では「立出し」か)があることから、これらを合わせたものと思われる。ただし読みは「たてはら」ではなく「たちはら」。

南原

未詳。こちらも旧字に大字要元上口堀字西原・大字蓮沼字台/原山/原/桑原・大字篠崎字原山があり、これらの「原」地名から、あるいは大穂町全体から見て南に位置することから名付けられたものと思われる。

花畑

3丁目の現・花畑近隣公園に花畑城跡があり、旧字にも大字玉取字花畑がある。

西沢

未詳。旧字に大字要元南口堀字西原・大字東平塚字西原が、また区域外に大字要元弥平太字本沢があり、その合成、あるいは「本沢の西」からか。なお、北郷の西側外縁の道路が「本沢」という字として不自然に独立している。

豊里地区

旧旭村から。

桜地区

天王台

近隣にある一ノ矢八坂神社、通称「一ノ矢天王」から。

追記 (2014/04/20): 筑波大学新聞313号によると、『この(祇園祭の)時、仮屋を建て、神輿(天王様)を奉納したのが現在の天王台1丁目付近であったことから』とのこと。

天久保

大字妻木字天久保から。字天久保は現在の筑波大学5C棟付近にあたり、当時の論文に大学の住所として載っているものも見当たる。旧集落に松美開拓集落が現在の3丁目にあり「松美」の名は何故か採用されていないが、大学構内の松美池・松美橋に名を残している。2丁目の筑波大学医学地区は大半が旧谷田部町にあたる。

吾妻

妻木集落に「吾妻さま」信仰があり、旧字にも区域外に大字妻木字吾妻下があるほか、妻木神社の境内社として吾妻神社がある。日本武尊の神話と同根のものか。

竹園

竹園開拓集落より。

千現

倉掛の千現塚(富士山)から。江戸時代、倉掛村・花室村と小野崎村の間にあった秣場争いがあり、倉掛の住民は富士山浅間神社に祈願。勝訴の後に当地に塚を築き浅間(せんげん)神社を祀ったという。現在ではその争いの地も学園都市の下である。

並木

大字大角豆字並木から。

梅園

梅里開拓集落より。里が園に変更された理由は不明。

谷田部地区

北郷

未詳。旧谷田部町の北部に位置するからか。なお北郷の西半分は旧大穂町にあたる。

西原

旧字に大字西平塚字西原・大字東平塚字西原があるが、字西原は要・苅間・西岡・山中にもみられ、また交差点名に「西原南」(現・研究学園西)があることから、実際には広範囲にわたる通称地名だったと思われる。

追記 (2016/11/30): 現在は交差点名「西原」(新都市中央通り、研究学園2・3丁目)および公園名「西原公園」(学園の森2丁目)にも名を残す。

八幡台

大字柳橋字八幡台から。

春日

大字東平塚字春日/春日谷・大字苅間字春日から。苅間の北の御林を春日原といったという。

東新井

大字小野崎の旧新井集落から。東は谷田部町大字新井と区別するためと思われる。地区内には旧集落の道路を残した不規則的な街区がみられる。

二の宮

江戸時代、二宮尊徳の指導で洞峰沼から小野崎村に用水路を掘ったが失敗したという「尊徳の馬鹿堀」の伝承から。

小野川

旧小野川村から、あるいは付近を流れる小野川から。

松代

近隣の松野木集落および手代木集落より一字ずつ採ったもの。

大わし

手代木の大鷲神社から。ひらがな表記は当時の常用・人名用漢字に「鷲」が収録されていなかったからか。なお大鷲神社は「おおとり」と読むものが多いが当社は「おおわし」。農業の神様であり、大わしとはやや離れているが、農業系の研究所が所在する地名にしては最適かもしれない。

藤本

大字上横場字藤原/本郷地・大字榎戸字本郷地があり、これらから一字ずつ採ったものか。

観音台

近隣の羽成観音普賢院から。なお当地は布袋集落→谷田部海軍飛行場→農場集落→研究学園都市と変遷している。

長峰

大字西大沼・上原・館野にあった字長峰から。当地には研究学園都市建設以前から高層気象台があった。

谷田部町の東端にあることから。合併後もつくば市東のままであるためわかりにくい。

稲荷前

現・赤塚公園内の稲荷神社から。研究学園地区内唯一の神社である。

高野台

旧字に大字館野字高野山・大字谷田部字鷹野原・大字下横場字鷹野があり、「たかの」を「こうや」と読み替えたものか。

茎崎地区

牧園

未詳。

池の台

未詳。隣接する低湿地はもともと池であった様子。

松の里

未詳。もともと開発前はアカマツに覆われていたのはここに限ったことではないが、森林研に因んでいるとも考えられる。

西の沢

未詳。稲荷川の西側に位置することからか。

若葉

大字の若栗と羽成を一字ずつ採り、字を変えたものと思われる。

区名についての考え方

ついでに。
政令市の区は市街地を人為的に分断したり、隣接地域を合わせたりするものが多く、そういった区域は歴史的な意味を持たない場合がほとんどである。そこに敢えて東西南北を避けて、もっともらしい伝統的な地名を与えるのは弊害もあるかもしれないなーとも思う。まあ変に区名に凝るよりは町字名のほうが大事だと思いますな。
ちなみに他の方の区割り妄想では地名を尊重してかなり細分化していたのが多かったですが、僕は敢えてその流れに逆らってみました。妄想だもの。
さいたま市中央区は与野区に改称するかわりに、新都心はどの区にも属さない本庁直轄地にすればいいと思います。
あと相模原市緑区も橋本区と津久井区にして、北海道の総合振興局と振興局みたいな関係にしましょう。
静岡市は安倍区・有渡区・庵原区で。
大阪都構想で区の編成がどうなるかが楽しみです。